青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
…藍色の浴衣に、慣れない下駄なんか履いて。
髪だって、毛先を巻いてみたりして。
利乃もきっと、可愛らしい浴衣で来るんだろうと思ったから。
もちろん彼女には敵わないけど、やっぱりちょっとでも可愛くみられたいし。
……そういう、もんなんでしょ?
恋するオンナノコって、いうやつは。
「麗奈!」
その声にドキッとして、慌てて顔を上げる。
…私服姿の慎也が、こっちへ歩いてきた。
いつもと違う雰囲気に、喉がごくりと鳴る。
…今からあたし、この人とふたりで祭りに行くんだ。
あたしはだんだんと近づいてくる慎也へ、「ちょっと、遅刻!」と可愛くない言葉をかけた。
「…え、待ち合わせ、七時じゃなかったっけ?」
「え?」
あたしを見て、彼は戸惑った表情を浮かべる。
ええっ、あたしが利乃から聞いた時間と違うんだけど。
携帯を見ると、六時五十分すぎ。
「早めに来たつもりだったんだけど…まさか、時間間違ってた?」
「わかんない。あたしは、六時半って聞いた」
「えー、マジか。連絡が行き違ったのかな…」
ごめん、と手を合わせる慎也に、慌てて「仕方ないよ」と言った。