青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「行こっか」


慎也の声で、あたしたちは歩き始めた。

見るからにカップルな男女がちらほらといるなか、慣れない下駄を鳴らして、人混みの中へ入っていった。





「なんか食べる?」


河川敷の近くで行われている、この祭り。

あたしたちは屋台の並ぶ通りを、人波に流されながら歩いていた。


「………麗奈?」


ざわざわと騒がしい周りの音に紛れて、隣から慎也の声がする。

ハッとして、「なにっ?」と慌てて顔を上げて彼を見た。

「…何か食べる?って訊いたんだけど。…麗奈、今すごいぼーっとしてたね」

「あ、ああ。そっか、ごめん!考え事してて」

へらっと笑うあたしを、慎也はじっと見つめてくる。

…綺麗な瞳。

盆踊りの音と声が、耳に響く。


「……考え事?」


そう言って首を傾げてくる慎也は、悪戯っ子のように笑っていた。

可愛らしいその笑みに、なんだか悔しくなってくる。


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