青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
「行こっか」
慎也の声で、あたしたちは歩き始めた。
見るからにカップルな男女がちらほらといるなか、慣れない下駄を鳴らして、人混みの中へ入っていった。
*
「なんか食べる?」
河川敷の近くで行われている、この祭り。
あたしたちは屋台の並ぶ通りを、人波に流されながら歩いていた。
「………麗奈?」
ざわざわと騒がしい周りの音に紛れて、隣から慎也の声がする。
ハッとして、「なにっ?」と慌てて顔を上げて彼を見た。
「…何か食べる?って訊いたんだけど。…麗奈、今すごいぼーっとしてたね」
「あ、ああ。そっか、ごめん!考え事してて」
へらっと笑うあたしを、慎也はじっと見つめてくる。
…綺麗な瞳。
盆踊りの音と声が、耳に響く。
「……考え事?」
そう言って首を傾げてくる慎也は、悪戯っ子のように笑っていた。
可愛らしいその笑みに、なんだか悔しくなってくる。