青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
…トモと、一緒じゃないみたいだ。
そういえばトモの奴、今日はこの前のテストでとった赤点教科の追試だとか、叫んでたっけか。
きっと今ごろ、追試に苦しんでるに違いない。
「誰か、待ってんの?」
あたしは軽く笑って、「ううん」と首を横に振った。
「傘、忘れちゃって」
池谷くんは外を見つめて、そしてあたしをもう一度見て、ハハッと笑った。
「この雨で、傘忘れるって。どーすんの、君」
……その笑い顔に、頭の奥がぼうっとする。
そしてやっぱり、彼の声と雨音だけが、強く耳に響いてきた。
あたしはぎゅっと拳を握って、いつも通り唇を尖らせた。
「あ…朝、急いでたし」
「わかる、よくあるよね」
そう言うと、池谷くんはあたしの横に立って、黒くて大きな傘を開く。
黙ってその様子を見ていたあたしに、彼は傘を見つめて言った。
「よかったら、入っていきなよ」
…えっ。
「ええ!?」
思わず、後ずさる。
い、いやいや、『入っていきなよ』って。
なんだそれ、なんだそれ。
相合傘、ってことでしょ!?