青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
「…そうなんだ。…連れてきてくれて、ありがとう」
花火を見上げてそう言うと、隣から「どういたしまして」という声が聞こえた。
「麗奈、座る?」
彼が指さすのは、すぐ近くにポツンと置かれた青いベンチ。
そこに白線で書かれた、知っている企業の名前は掠れていた。
お世辞にも綺麗とは言い難いそのベンチに、座ろうか迷っていると、後ろでバサ、と何かを広げる音が聞こえた。
驚いて振り返る。
慎也が持っているのは、可愛らしいチェック柄のビニールシートだった。
「……え」
「利乃に持たされてたんだ」
苦笑いを浮かべる慎也の言葉に、目を見開く。
…やっぱり、利乃。
「これ敷けば、座れるでしょ」
バサ、とベンチの上にシートが敷かれた。
あたしは、「さすが利乃」と笑う。
……利乃とトモが行けなくなったから、今あたしはこうしてるんだ。
慎也とふたりきりで、花火を見てる。
他の友達と行ったというトモの姿を、何気なく探してはみたけど、見かけなかった。
…疑う、わけではないけど。
少し不安になるくらい、仕方ないと思う。