青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
「そんなの、わ、悪いし…!いいよ、走って帰るよ!」
慌てて手を振って拒否したら、池谷くんはムッとして「ダメだよ」と言った。
「風邪引くよ」
「引かないよっ、あたし丈夫だし!」
ねっ!?と胸を叩くと、池谷くんはそれでも「ダメ」と言う。
「小城さんを雨の中走って帰したとか、俺が利乃に怒られるから」
………あ。
そういう、こと。
「……それは、そうかもね…」
妙に納得してしまって、呆然とする。
なんか、過剰に反応しちゃった自分が恥ずかしい。
…なに、思い上がってんの。
池谷くんにとって、あたしは『幼馴染の友達』だ。
だから仲良くしてくれるし、こうやって親切にもしてくれる。
…ほんと、なに思い上がってんだろ。
あたしなんか、なんにも持ってない、その辺にいくらでもいるような女子なのに。
……池谷くんがあたしに興味を持つことなんて、ない。
「じゃあ…お言葉に甘えて。入れてもらおうかな」
眉を下げて笑うあたしに、池谷くんは綺麗に優しく笑った。
……こっちが苦しく、なるくらいに。