青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
そのくせ、文系クラスにいる。
数学が苦手な利乃も、もちろん同じクラス。
あたしたちは、去年高校に入学して知り合ってから、ずっと一緒にいる仲だ。
「じゃあ、帰ろうか」
学生カバンを、肩に掛け直す。
あたしがそう言うと、利乃は「うんっ」と機嫌良く頷いた。
「私、教室にカバン取りにいってくるね」
「ん」
パタパタと小走りで、利乃は教室へ戻って行く。
あたしはその後ろ姿を見送りながら、耳を澄ませた。
…放課後の廊下で、雨音が静かに鳴り響く。
その心地良さに目を閉じて聞き入っていると、利乃がカバンを持って教室を出てきた。
慌てて走ってくるせいで、途中でつまずいてこけそうになっている。
あたしは軽く「なにしてんの」と笑いながら、いつも通り利乃と一緒に廊下を歩き始めた。