青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


…担任の武崎先生に呼ばれて、何かと思えば。

お前はもっと国語力を伸ばすべきだとか言って、国語の課題を渡されてしまった。

面倒くさい…苦手なのが本当だから、さらに面倒くさい。

夏休み課題はたんまりあるのに、なんでわざわざ別のプリントまでしないといけないのか。

現代文やら古文やら漢文やらの、数枚のプリントを片手に、教室へ戻る。

教室では、利乃が待ってくれているはずだ。

きっと『あーあ麗奈ちゃん、どんまいだねっ』とか言って笑われるに違いない。

とぼとぼと、廊下を歩く。

自分の教室の近くまで歩いてきたとき、廊下側の窓から、慎也の声が聞こえた。


「…利乃。ここから、あの海が見える」


ぴた、と。

あたしの足が、止まった。

…なんでかは、わからない。

けどどうしても、教室へ入れないと思って。

トモは今日、友達と一緒に楽しそうに帰って行った。

それに、慎也はついて行かなかったんだ。

だからきっと今、教室には利乃と慎也しか、いない。


……『あの海』。

慎也がいつも、窓から見ている海のこと、だ。

「………」

あたしは廊下の壁際に、そっと寄りかかった。


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