青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「……知ってるよ。ずーっと前から」


利乃の、少しふてくされたような声が聞こえる。

『海』…海。

彼がなりたいと思う、海。

彼が好きな、海。

けど…行くことはできない、海。

頭の中で、慎也の『海』に関する色んな言葉と表情が駆け巡る。

…なんでかわからない。

けど心臓が、ものすごい速さで嫌な音を立て始めたから。


「……よく見えるな、ここ」

「…でしょ?」


何気ない、会話のはずなのに。

ふたりの声が、やけに落ち着いていて、それがあたしを焦らせる。

…なんで?

わかんない。

わかんないけど、でも。

でも…

次に「いいよね、ここ」と言った利乃の言葉が、あたしの目を見開かせた。



「…あの海を見てたら、安心するもん」



どく、と。

利乃の声と、あたしの心臓の音が、重なった気がした。


「……………」


頭の中が、真っ白になる。

だんだんと意味を理解していくに連れて、あたしの瞳にじわじわと涙がにじんでいった。


「………っ、!」


そのまま、教室とは反対方向へ駆け出す。


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