青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
…あのふたりから、逃げるように。
気づいてしまった事実から、目を背けるように。
『あの海を見てたら、安心するもん』
……それ、は。
あの雨の日、彼が『海になりたい』と言ったときの。
『…海ってさぁ、見てると安心するじゃん』
同じ、ことば。
「………は、はぁ、はぁっ………」
昇降口の近くの自販機の前で、立ち止まる。
息を短く吸いすぎて、咳き込んだ。
絶え間無く出てくる涙が、悔しい。
「…っうぅ、わぁぁん…」
座り込んで、嗚咽を漏らして泣く。
信じたくない、信じたくない、けど。
……なんで、気づかなかったんだろう。
教室の窓から見える、あの海の近くには、利乃と慎也の家があるんだ。
『海を見てると安心する』のは、慎也じゃない。
それは、利乃だ。
利乃が『海を見てると、安心する』。
……だから彼は、『海になりたい』。