青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
明らかに周りの女の子たちとは違う、完璧とも言えるほど愛らしい雰囲気と容姿。
人の目を引く彼女は礼儀正しく、それでいて無邪気で、教師達を喜ばせた。
男子もその愛くるしい笑顔に見惚れ、多少のわがままなら許せてしまう。
問題は、女の子たちだった。
男子達の視線を一身に浴び、教師からも可愛がられる利乃。
みんな一緒、足並み揃えて歩きましょうという女の子たちにとって、それが気に入らないのは当然だった。
三年生に進級する頃には、利乃の母親が水商売をしていることが、同じ学年の保護者の周知の事実となっていて。
親の苦い顔を見て、女の子たちはここぞとばかりに利乃へ悪口を言った。
『リノちゃんって、ぶりっ子だよね。ぜったい、自分がいちばん可愛いと思ってるんだよ』
『ママから聞いたもん、あたし。リノちゃんのお母さん、『夜のおしごと』してるんでしょ』
『リノちゃんも、そうなんだよ。だからあんなに、男子と仲良くできるんだ』
それでも当の本人は全く気にしていないのか、堂々と『だから?』なんて返していた。