青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
俺の母親はというと、たぶん早々に利乃の母親の仕事は知っていたんだろうけど、気にもしていないようだった。
むしろ、『利乃ちゃん、あんなに礼儀正しくていい子だなんて、きっとお母さんの教育がいいのね』なんて言っていた。
俺はといえば、母親同士の仲が良いせいで、いつも利乃の召使いのような立ち位置にいた。
三年生の夏休みは毎日のように利乃と遊び、互いの家を行き来するのは、もはや当たり前。
まるで家族のような存在となっていて、男子達には羨ましがられたけど、正直俺はあまり嬉しくなかった。
『慎也くんっ、あそぼー!』
家の前で、利乃が俺の部屋に向かって叫ぶ。
その顔はいつもニコニコしていて、元気だなぁと感心すらも抱くほどだった。
俺が家の扉を開けると、利乃は嬉しそうに笑う。
俺はそんな彼女を見て、ため息をついた。
『…利乃ちゃん、女の子と遊ばなくていいの?』
『わたし、女の子の友達いないもん』
なんてさみしい言葉だろう。
利乃は何も悪くないとはいえ、もう少し女の子と仲良くなる努力をすればいいのに。