青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


『…いっつも俺と遊んで、つまんなくないの?』

『ううん。慎也くんはつまんない?』

一見無垢な透き通った彼女の瞳に、自分の姿が映る。

俺は利乃を見つめて、少しの間考えたあと、『…ううん』と答えた。


『……つまんなく、ないよ』


彼女はいつものように、ニッコリと笑うのだった。






小四から、女の子達は利乃に嫌がらせをするようになった。

教科書に落書きされたり、靴を隠されたり。

今思えば、それはとても幼いやり方だったけど。

見ていることしかできない周りの人間は、冷めた目をして受け止める利乃が、痛々しく見えた。



ーードン。

意地悪そうに笑う女の子が、利乃にわざとらしくぶつかるのを、廊下で見てしまった。

よろけた利乃は、持っていた教科書をばらばらと落とす。

キャハハと笑いながら教室へ入っていく女の子達。

利乃は何も言わず、静かに教科書を拾い始めた。


< 208 / 380 >

この作品をシェア

pagetop