青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
『…いっつも俺と遊んで、つまんなくないの?』
『ううん。慎也くんはつまんない?』
一見無垢な透き通った彼女の瞳に、自分の姿が映る。
俺は利乃を見つめて、少しの間考えたあと、『…ううん』と答えた。
『……つまんなく、ないよ』
彼女はいつものように、ニッコリと笑うのだった。
*
小四から、女の子達は利乃に嫌がらせをするようになった。
教科書に落書きされたり、靴を隠されたり。
今思えば、それはとても幼いやり方だったけど。
見ていることしかできない周りの人間は、冷めた目をして受け止める利乃が、痛々しく見えた。
ーードン。
意地悪そうに笑う女の子が、利乃にわざとらしくぶつかるのを、廊下で見てしまった。
よろけた利乃は、持っていた教科書をばらばらと落とす。
キャハハと笑いながら教室へ入っていく女の子達。
利乃は何も言わず、静かに教科書を拾い始めた。