青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


『…利乃ちゃん、大丈夫?』

急いで駆け寄って、手伝う。

顔を上げた利乃の表情は、驚くほどいつもと変わらなかった。


『…なんだ、慎也くんか。ありがとう。ひどいことするよねえ、もう』

“性格ブス”、“ぶりっこ”。

他にも色んな醜い言葉が書かれた教科書を、利乃は大事そうに抱えた。

そして心配する俺に、明るく笑って。


『でも、大丈夫。ぜーんぜん気にしてないの、わたし』


……どうしてそんなに、強いんだろう。

ひどいことをされても、それでも弱音を吐かずに立ち上がる利乃が、眩しく見えた。

『だって、わたしが可愛いのは本当でしょう?あの子達より、頭だっていいし。あ、算数はちょっと苦手だけど…』

そう言って、へへっと笑う。

利乃は、努力家だった。

学校では自由に華やかに振る舞っていたけど、実は家で勉強をしていることを、俺だけが知っていた。


そんな、夏の日。

夏休みを目前に、授業参観が行われた。

授業が終わり、みんなが席を立って、恥ずかしそうに親の元へ向かう。


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