青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
祖父母に水商売をしていることを隠して、朝から晩まで働く母親のことを、利乃は尊敬していた。
『わたしがいい子でいれば、ママが悪く言われることもないでしょ?』
初めて会ったとき、俺を睨むくらいに強く見つめていた利乃を思い出す。
けど、母親に促されると、すぐに態度を変えた。
完璧なほどの愛らしさと明るさ、笑顔。
……ぜんぶぜんぶ、母親のためだったんだ。
『わたしはわたしのこと、間違ってると思わない。大人はみんな、わたしのこと好きになってくれる。だからあの子達に何言われても、気にしないの』
確かに、そうだ。
クラスの女子達が利乃をいじめるのは、完全に妬みによるもの。
利乃は普通に、…ほんの少しだけ上手に、生きているだけだ。
………でも。
この子がいくら強くたって、それでも俺と同い年の女の子だ。
まだ小学四年生、ひとりぼっちの家で、辛くないはず、ない。
ブレスレットを探している間、しばらく利乃は泣き止まなかった。
堰を切ったように溢れてくる涙に、利乃自身も驚いているみたいで。
俺は、不安になったんだ。
『…我慢してるんじゃ、ないの?』
そう言うと、利乃は驚いたように俺を見た。
きっと、互いの家族より何より、俺たちは一緒にいる時間が長い。