青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
…私はもう、これが似合うくらいに身体も成長したはずなのに。
全然、足りないの。
私はまだ、これが似合うくらいに大人じゃない。
綺麗でありたいのに、まっさらなほど綺麗でありたいのに。
彼を『慎ちゃん』と呼ぶ、私はまだ子供だ。
幼かったあの頃を、手離すことができない。
……私はまだ、ひとりで海へは行けないんだ。
*
小学四年生の夏休み、俺は利乃が泣きたいときにそばにいてあげる、誰よりも近い存在になった。
けど、それから小学校で、利乃と話すことは減っていった。
利乃が、女子と仲良くしようと努力を始めたんだ。
いきなりどうしたの、と訊くと、彼女は嬉しそうに『慎ちゃんがいるから』と言った。
『今までは、結局わたしが辛くなるだけって思ってたけど…これからは、慎ちゃんがいてくれるもん。何かあっても大丈夫、でしょう?』
…確かに、そうだけど。
もっと、頼られるものなんだと思っていたから。
少しだけ、拍子抜けをした。