青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


…私はもう、これが似合うくらいに身体も成長したはずなのに。

全然、足りないの。

私はまだ、これが似合うくらいに大人じゃない。

綺麗でありたいのに、まっさらなほど綺麗でありたいのに。


彼を『慎ちゃん』と呼ぶ、私はまだ子供だ。

幼かったあの頃を、手離すことができない。



……私はまだ、ひとりで海へは行けないんだ。







小学四年生の夏休み、俺は利乃が泣きたいときにそばにいてあげる、誰よりも近い存在になった。


けど、それから小学校で、利乃と話すことは減っていった。

利乃が、女子と仲良くしようと努力を始めたんだ。

いきなりどうしたの、と訊くと、彼女は嬉しそうに『慎ちゃんがいるから』と言った。


『今までは、結局わたしが辛くなるだけって思ってたけど…これからは、慎ちゃんがいてくれるもん。何かあっても大丈夫、でしょう?』


…確かに、そうだけど。

もっと、頼られるものなんだと思っていたから。

少しだけ、拍子抜けをした。


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