青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
『…そうだね。頑張って、利乃』
『うんっ、ありがとう!』
そうして利乃は、持ち前の明るさを武器に、女の子の中へ飛び込んでいった。
もちろん後藤リエ達とは、関わらないようにしていたけど。
最初は戸惑っていた女の子たちも、いつも笑顔でいる利乃の優しさと明るさに、少しずつ打ち解けていった。
今でいう麗奈のような存在こそできなかったけど、小学生の間、利乃はそれなりに女の子と上手くやっていたように思う。
けど、利乃の悩みの種は家庭の方へと移っていった。
利乃の母親が、今まで以上に家を空けるようになったのだ。
『お邪魔しまーす』
五年生に進級する前の春休みになると、ますます利乃の母親の帰りは遅くなった。
利乃は気にしていないのか、やっぱりいつも笑顔だ。
泣きたいときにそばにいてあげる、と言ったのに、利乃はあれから泣いていない。
利乃のことが大好きな俺の母親は、そんな利乃を心配して、よく夕飯を食べにくるよう言った。
利乃は何度も俺の家に来ているのに、毎回礼儀正しくお辞儀をして、靴を脱ぐ。
慎也も見習いなさいよ、なんて母親に言われるほどだ。
リビングに入り、テーブルに並べられた食事を見て、利乃は瞳を輝かせた。
『きゃあ!おばさん、今日のご飯もすっごく美味しそう!』
『あらあら、ありがとう。利乃ちゃん、この前エビフライが好きって言ってたでしょう。作ってみたのよ〜』
『ありがとうー!』
呆れる俺の目の前で、利乃と母さんはきゃいきゃいとはしゃぐ。
ついていけなくて、何も言わずに席についた。