青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
「………」
ただ驚くばかりで、声が出ない。
…見て、くれてたんだ。
進路のことで、あたしはずっと悩んでた。
でもため息なんて、利乃がトモと池谷くんと楽しそうに話してるときくらいしか、ついてないし。
誰も、気づいてないと思ってたんだけど。
…なんか、ヤバイな。
嬉しい、なぁ。
「…あ。別になにもないんだったら、いいんだけど……」
「ううん」
あたしは、首を横に振った。
…いい人、だなぁ。
こんな人の『大切な人』になれたら、どれだけ幸せなんだろう。
「…話、聞いてくれる?」
小さく笑ってそう言うと、池谷くんはあたしを見て、すぐに「ん」と笑ってくれた。
あたしは前を向いて、相変わらず降り続ける雨を見つめながら、口を開いた。
「…池谷くんは、将来なりたいものって、ある?」
踏んだ水溜まりが、ぱしゃん、と飛沫をたてる。
濡れたスカートを、ぐっと握りしめた。