青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


『…なにも言わずに、手を繋いでね。…泣いちゃう、から。慎ちゃんも思い切り泣いて、いいよ』


…重なる手の上に、涙が落ちる。

それを見て、俺の視界がじわりと歪んだ。


『ねえ、慎ちゃん。お願い、ひとりで泣かないで。わたしはどこにも行かないから、慎ちゃんのそばに、いるから』


唇を噛んで、利乃の手をきつく握りしめる。

ぽたりと瞳から雫が落ちて、利乃の涙と、手の上で重なった。


……寂しいよ、母さん。

そう叫んでも、誰もこっちを見てはくれない。

こっち見てよ、寂しいよ。

泣かないで、ひとりで声を押し殺して、泣いたりなんかしないで。

…僕らは、怖いんだ。


母親の涙が、何よりも怖くて、悲しいんだ。


『……う、わぁぁぁん』

利乃が、声を上げて泣いた。

上を向いて、まるで訴えるみたいに、泣きながら叫ぶ。


『うぁぁぁん、ママぁ〜…』


…大好きな誰かの涙を見るのは、息が詰まって、どうしようもなくて。

苦しくて、怖い。

何もできない幼い僕らは、ただただ怯えることしかできない。

どうか泣かないで、と心のなかで叫ぶことしか、できないんだ。


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