青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
声は、上げられなかった。
けど、利乃の手を握りしめて、ボタボタとテトラポットのコンクリートを濡らしていく。
……大好きな人の、大切な人になりたいだけなのに。
どうしてこんなに、難しいんだろう。
もしかしたら僕らは、できないのかもしれない。
大切な人の支えには、なれないのかもしれない。
それから俺と利乃は、一晩中泣いた。
泣き止んでからも、朝まで家には帰らなかった。
海のテトラポットで、手を繋いだまま泣きはらした瞳で、海に浮かぶ朝日を見つめる。
澄んだ朝の海の空気と、強い日射しに照らされて、白いくらいに輝く海。
利乃はそれを見て、ふ、と目を細めた。
そして、澄んだ声で『約束だよ』と言って。
『夜になったら、手を繋いで。一緒に海へ行って、泣き合うの。朝になったら、笑うんだよ。誰よりも、楽しそうに』
……さびしいさびしい、約束。
けれどかけがえのない、ふたりきりの約束だった。