青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「……あ」

驚いて、思わず立ち止まる。

目があって、そらしそうになるのを必死に抑えた。


「…し、慎也も、お見舞い?」


訊くと、慎也は「うん」と苦笑いを浮かべた。


「部屋の前で、追い返されちゃったけどね」


……あ。

昨日のトモの言葉を、思い出す。

『利乃ちゃんは、慎也と離れようとしてるんだと思う』

……本当、に。

利乃は、慎也と離れようとしてるんだ。



「…じゃあ、麗奈。利乃のことよろしく」


隣の家へ帰って行こうとする、その背中を見つめる。

…あたしに、何ができる?

でも、何もしないまま黙って見てるなんて。

そんなのやだって、思ったじゃん。

大切な人の大切な人になるんだって、決めたじゃん。

その中には慎也や利乃、トモもみんなみんな、入ってる。

…大好きな人たちが今、苦しんでるのに。

あたしは何もできないなんて言って、立ち止まってるの?

必死にもがいてる利乃が、何を想って嘘をついているのか、あたしにはわからない。

ただ、きっと。



今、きっとふたりには、ふたり以外の誰かが必要なんだ。



「……慎也!」

あふれる感情に任せて、叫んだ。

慎也が驚いたように、振り返る。

買い物袋を、ぎゅっと握りしめた。


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