青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


慎也があたしの顔を見て、ハッとする。

…そして、あたしの手首を掴んだ手を、離そうとした。


「……や、やだ!」


咄嗟に、その手を掴む。

ぶんぶんと首を横に振るあたしに、慎也は「麗奈」とまた呼ぶ。

唇を噛んで、彼はあたしを見ていた。

「…ごめん、麗奈」

「やだ、あきらめない」

「麗奈の時間がもったいないよ」

「もったいなくない!」

ボロボロと、涙がこぼれる。

慎也はあたしの涙を、指ですくう。

その手はやっぱり、冷たくて。


「…俺じゃ、駄目なんだよ」


そう言う彼の声が、すごくすごく、寂しそうに聞こえる。

…やだよ。


あきらめたく、ないよ。


「…っ駄目じゃ、ない…っ。あたしは、慎也がいい」

掴んだ手を、握りしめる。

ねえ、こっち見て。

ちゃんと、見て。


「あたしは、慎也が心の底から笑ってる姿が見たい」


こぼれる涙を構うことなく、あたしは慎也を見上げて言った。




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