青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


…でも。


「俺のことなんか、放っといてもいいのに。…なんでこんな奴、好きになったんだよ」


その言葉に、あたしは唇を噛んだ。

自嘲するように笑う、慎也。

…だって。


「言ったじゃんか、あたし」


雨が降って、ふたりで傘を半分こにして。

はじめて距離が、縮まったあの日。

あたしは彼の、『特別』になった。

そしてあたしを『面白い』なんて言って、楽しそうに笑う。

……君の、こと。



「慎也はあたしの『特別』になったって、…言ったじゃん」



だから、放ってなんかおかない。

寂しく笑う、君のままでいさせたくない。

あたしはあたしの『特別なひと』を。

……あたしの『大切なひと』を。


放ってなんか、おかない。



「…ふは。…そう、だったね」


慎也は、笑った。

あたしの頬に手を添えたまま、面白そうに笑う。

…ああ、あのときと同じ。

あたしが惹かれた、笑顔。


ほっとしたあたしの頬を、慎也の指がなぞる。

びくりすると、愛おしそうに目を細められた。

…え?

どう、したの。

なに、なに。

戸惑うあたしに、彼は眉を下げて、笑った。


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