青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「…ほんと素直で、優しすぎ」


その笑顔に驚いている間に、慎也の綺麗な顔が近づいてきて。

…慎、也……?

手の添えられた頬が、熱い。

唇が触れる数秒前、慎也は呟くように言った。


「……優しすぎるから、俺、甘えちゃうんだよ」


重なる、唇。

甘いはずのそれは、少しだけ苦い。

嬉しいなんて、思えなかった。

だって、慎也の瞳は、すごく切なそうに細められていて。

唇が離れると、じわりと涙のにじんだ目で、彼を見つめる。

震えた手で、すぐそばにある慎也の頬に手を当てた。


「……甘えて、いいよ」


なんで、そんな目をするの。

なんで、諦めたように、笑うの。

彼は、その頬に添えたあたしの手に自分の手を、そっと重ねた。

そして、「ダメだよ」と言う。

その瞳には確かに、あたしが映っていた。



「…俺は、麗奈につりあわない」



なんで。

…なんでそんな、こと………


「…慎也」

たくさんの『なんで』が、あたしのなかを埋め尽くす。

歪む視界のなかで、慎也が悲しそうに笑うのが見えた。


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