青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
「…そうだね」
エプロンつけて、目を伏せて。
彼は手慣れた手つきで、チャーハンを作っていく。
私はそれを、ぼうっと見つめていた。
そうしていると、昨日のことを思い出してくる。
いつから麗奈ちゃんは、慎ちゃんの好きなひとを知っていたのかな。
いつから、私だと…気づいて、いたのかな。
慎ちゃんに直接言葉で、『好き』だと言われたことはない。
けど、いくら幼馴染だからって、『好き』の種類くらい見分けがつく。
私はとうの昔から、慎ちゃんにとっての『女の子』が私だけなことくらい、わかってた。
……私の慎ちゃんへの『好き』と、慎ちゃんの『好き』には、違いがあることにも。
『あたしはっ…利乃から慎也、奪えなかった!』
…本当に?
本当に、奪えなかった?
だって私、わかるよ。
慎ちゃんのことなら、誰よりも知ってる自信があるもん。
…彼が誰かに心を開く瞬間なんて、見ていたらわかる。
だから私は、寂しくなった。
補習の日、一生懸命に帰りのお誘いをする麗奈ちゃんは、可愛くて。
あのときの、慎ちゃんの安心しきった笑顔は、忘れられない。