青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「…利乃は、調子いいよなぁ」


…慎ちゃん。

素直に、なって。

気持ちを認めて、麗奈ちゃんのところに行ってよ。

……それで、こんな最低な女、早く嫌いになって。

お願い、慎ちゃん。


「…ふふ。慎ちゃんが優しいからだもん。私を甘やかす、慎ちゃんがわるーい」


細められた彼の瞳から目をそらし、チャーハンを食べる。

やがて慎ちゃんも食べ始めると、会話もなく、静かになった。

けど、気まずくはなくて。

ゆったりと進む時計の中で、彼と過ごす優しい時間。

…そしてそれは、きっともうすぐ無くなってしまう時間なんだろうと、思った。



「……ねえ、慎ちゃん」

流し台で、使った食器を洗う。

慎ちゃんの家でご飯を食べたら、洗い物は私がする。

…彼のお母さんが、まだこの家にいた頃からの決まりごと。


キュッと水を止めて声をかけると、リビングのソファに座って携帯を眺めている慎ちゃんは、「ん?」と声だけ返してきた。



「麗奈ちゃんのこと、フったって本当?」



ぴた、と。

携帯を触るその手が、止まった。

私はあくまで、静かにそれを見つめる。

慎ちゃんは携帯を置いて、私を見つめた。


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