青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「………うん」


…麗奈ちゃんが、彼に夏祭りの日に告白した事は、次の補習の日に気づいた。

気まずいふたりの様子を見て、フラれてしまったことも。

だけどそのときに何も言わなかったのは、まだ麗奈ちゃんは諦めないでいてくれると思ったからだ。

…そして、慎ちゃんもそれに応えてくれるだろうと、思ったから。



「……なんで?」


タオルで手を拭き、台所を出る。

慎ちゃんはクッションを抱いて、私から目をそらした。

「慎ちゃんっ」

「………」

慎ちゃんの気持ちは、もうわかってる。

なのになんで、彼は認めてくれないの。


じっと見つめる私へ、慎ちゃんはゆっくりと視線を戻した。

強く強く、見つめられる。

そして、何年も彼と一緒にいたはずなのに、声にのせられることなかった言葉を、告げられた。



「…わかってるだろ。利乃が好きだからだよ」



その瞬間、私は近くにあったクッションを、思い切り投げつけた。

…なんで。

なんで、なんで。

唇と手が、震える。

なんで今、そんなこというの。

何年も何年も、私に告げずにいた言葉を。


なんで今、言うの。



「…っそんな嘘つく慎ちゃん、大っ嫌い!」



瞳からボタボタと、涙がこぼれる。

慎ちゃんは何も言わず、投げつけられたクッションを、目を伏せて見ていた。



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