青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


………わかるに、決まってる。

滅多につくことのない、君の嘘。

わからないはず、ない。

だから、悔しい。


ねえ、気づいてないでしょう。

最近、慎ちゃんの口から出てくるのは、大抵が麗奈ちゃんとのことなんだよ。


どうしようもなくなって、リビングを出る。

靴を履いて、いつも欠かさない『お邪魔しました』の言葉も、言わずに玄関の扉を開けた。



……慎ちゃんのいちばんが、私じゃなくなっていく。

そう望んだのは、私。

そう仕向けたのも、私。

だから何も言えないし、言うつもりもない。


ただただ、彼から告げられる『好き』の言葉は、嘘であって欲しくなかった。

私のことだけを好きな、慎ちゃんの口で言って欲しかった。

…それだけ。

それだけ、だよ。


バタンと自分の家の扉を閉め、玄関に崩れ落ちる。

慎ちゃんの家へ行っている間に帰ってきていたお母さんが、心配そうにリビングから出てきた。


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