青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
でも、一度声にしてしまったら、もう強くはいられない気がして。
この気持ちに名前なんか、つけたくない。
そんなの、いらない。
幼い頃、無邪気に彼へ想いを伝えていた、馬鹿みたいな私。
簡単に言えた『好き』の言葉が、こんなにも重みを持つようになった。
先に大人になったのは、どっちなんだろう。
『わたし、きっと慎ちゃんがいてくれたら、もう何もいらなくなっちゃうね』
あの言葉が、すべて。
わがままで誰にも知られたくない想いの、すべて。
“ 彼さえいれば、それでよかった ”
そんな願いは、もう許されない。
ねえ、お願いだよ、みんな。
『逃げんな』って。
『利乃はずるい』って。
わかってるよ、わかってるから。
お願いだから、目を背けさせて。
東京へ行く前、私のために『残る』と言った慎ちゃんの姿が、頭から離れない。
私は彼を、ダメにする。
だから私は、彼がいなくても笑うことができる女の子に、ならなきゃいけないんだ。
私は私の力で、幸せになるって決めたから。
…離れなきゃ、いけない。
私と慎ちゃんが、前へ進むために。