青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
利乃が俺を求めたように、俺も利乃を求めてた。
唯一居心地が良くて、安心できる場所。
…そうだった、はずなのに。
いつの日からか、利乃は少しずつ俺から離れていった。
ひとりで大人になろうとする彼女は、俺の前でも笑うようになって。
無理をして笑っているのなんか、すぐにわかったから。
あの頃のように、そばで泣いてほしかったのに。
…それを利乃は、拒んだんだ。
しん、と静まり返った家の中。
もうあの頃のように、すすり泣き声は聞こえない。
それでも俺の苦しさは、増すばかりで。
『わたし、きっと慎ちゃんがいてくれたら、もう何もいらなくなっちゃうね』
……俺だって、いらなかったよ。
利乃以外、何もいらなかったよ。
けど少しずつ、確実に、ズレていって。
俺と利乃の間には、色んなものが埋まるようになっていった。
玄関にかけてあるカレンダーは、俺に夏の終わりを突きつけてくる。