青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
「…慎也のとこ、行って。利乃」
そう、静かに言った。
私は靴を脱ぐこともできないまま、立ちすくむ。
…慎ちゃんとは、あの日『大嫌い』と言ってから、会ってない。
鳴るチャイムの音が、遠くに聞こえる。
私はゆっくりと、首を横に振った。
「…だめ、だよ…私、行けないよ」
唇が、震える。
…私が行ったら、今度こそ離れられなくなる。
離れるって、決めた。
もう甘えないんだって、決めた。
だから、私は…
「利乃」
「…麗奈ちゃんが、行った方が」
「あたしじゃダメなの!慎也は今、あんたを求めてる!あんたじゃなきゃ、ダメなの!」
…違うよ。
慎ちゃんが今本当に好きなのは、私じゃない。
麗奈ちゃん、でしょう。
…このまま私のことを、忘れてくれたら。
それで、よかったのに。
迷う私を見て、麗奈ちゃんは握りしめた手を震わせる。