青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「…いいんだよ、もう。慎ちゃんがしたいように、して」

「………けど、」

「慎ちゃんが笑ってくれなきゃ、私、やだよ」


慎ちゃんがいなきゃ、私は今頃笑えてなかったよ。

だから慎ちゃんも、笑っていて。

無理した笑顔じゃなくて、心の底からの笑顔を。

どうか、見せて。


眉を寄せて泣くのをこらえている慎ちゃんを見ていると、私まで苦しくなってくる。

本当は今だって、喉の奥が痛い。

息が詰まって、苦しい。

でも、伝えたいから。

私の気持ち、みんなの気持ち。


…君に、伝えたいから。


私は右手を、差し出した。


「手、繋ごう。慎ちゃん」


彼は顔を上げると、私を見つめた。

そして『約束』を守って、何も言わずに繋いでくれる。

それが愛しくて苦しくて、やっぱり泣きそうになった。



……昨日のことのように思い出せる、ふたりきりで過ごしたあの夏の日を。

お互いが、お互いだけだった。

支え合って生きていた、寂しい寂しい夏の夜を。

たくさん泣いたね、たくさん笑ったね。

君との思い出は、私達だけのもの。


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