青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
「慎ちゃんだって、気づいてるでしょう?もう私達、ふたりきりじゃないんだよ」
目をそらさずに、前を向いて。
私達、ふたりきりだったね。
ふたりで、生きてたね。
…だけど、もう、違うんだよ。
慎ちゃんが唇を噛んで、「…利乃」と呼ぶ。
…今まで、何回呼ばれただろう。
君が呼んでくれる名前は、それだけで大切にされているような気がして。
私はいつだって、嬉しかったよ。
誰より愛しい響きをして、私の中に残っているよ。
大好きだよ、今でも、ずっと。
私はこぼれる涙を拭うことなく、「ねえ、慎ちゃん」と呼ぶ。
だって、きっともう最後だから。
君の前で泣くのも、きっと最後だから。
……思い切り、泣かせてね。
「今年の夏、楽しかった…?」
「…楽しかったよ」
「慎ちゃん、いっぱい笑ってたもんね」
「…うん。利乃がいっぱい、笑ってたからね」
だから笑えた、なんて。
涙声でそう言う君に寂しさが募って、どうにかなりそう。