青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


離れたく、ないよ。

ずっと一緒に、いたかったよ。

でも、もうすぐこの手は離されてしまうから。

ぎゅ、と強く握ると、同じ強さで握り返してくれる。

愛しい愛しい君の瞳には、色んな青色がにじんでいた。

それを見て、私は目を細める。

そして、口を大きく開けた。


…ねえ、慎ちゃん。

最後に、私のわがままを聞いて。




「好きだよ、慎ちゃん。大好きだよ」



涙が覆う、彼の目が見開かれて。

波の音で掻き消されないように、私は精一杯の大声で、想いを告げる。


「私のこと、ずっと好きでいてくれてありがとう。…っ、そばにいてくれて、ありがとう。…いつもいつも、あり、がとうっ……」


彼は涙をこぼして、唇を噛んで、私の手をきつく握った。

いつもなら、抱きしめてくれていただろう。

けど、彼は私の手を握るだけ。

それで、いいの。


もう、いいの。



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