青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「私はもう、大丈夫だよ。慎ちゃんがいてくれたから、私、こんなに強くなれたの。…もうっ、大丈夫だから」

ひとりだって、笑えるよ。

君じゃない誰かの前でも、泣くことができるようになった。

…だから、大丈夫。


もう、この手を離しても、大丈夫。


「慎ちゃんが本当に好きな人のところへ行って。…それでいっぱい、笑ってね。誰よりも…っ、幸せに、なってね」


慎ちゃんは目を閉じて、「…うん」と涙のにじんだ掠れた声で、頷いた。

好きだよ、慎ちゃん。

大好きだよ。

世界一幸せになって欲しいって、願ってる。


慎ちゃんは私を見つめると、涙の浮かんだ目を細めて、言った。



「…強くなったね、利乃」



……他の、誰より。

慎ちゃんから言ってもらえるその言葉が、嬉しくて。

また、涙があふれる。

私は唇を噛んで、震えた声を出した。

「……本当?」

「うん」

「…そっか。…ありがとう」

私がそう言って笑った瞬間、繋いでいた手は離れた。

覚悟していたことなのに、心臓の奥底がドクンとなって。

涙があふれた私の両頬を、彼は大きな手のひらで包んだ。


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