青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
目を見開く私の顔を覗き込んで、君は誰よりも優しい笑顔で、笑う。
…それは見たことないほどに、無邪気な笑顔で。
「…好きだよ、利乃。今までずっと、ありがとう。…利乃がいたから俺、寂しくなかったよ」
……慎ちゃん。
慎ちゃん、慎ちゃん。
彼は私の頬から手を離して、切なげに微笑んで。
……私の前から、消えていく。
駆けていくその先にいるのは、私にとっても大切な人。
慎ちゃんが海からいなくなっていくのを、私は見つめることができなかった。
その場にしゃがみこんで、涙を流す。
……君とふたりだけの『約束』と、お別れ。
朝になっても、無理に笑わなくていいよ。
寂しい寂しい夜は、きっと君の大切な人が、愛してくれるから。
……どうか。
幸せになって。
そのとき、近くでジャリ、と砂が踏まれる音がした。
驚いて、振り返る。
私の前に立って、何も言わずに見下ろしてくる。
…そこに、いたのは。
「…トモ、くん」
彼は目を細めて、ふ、と笑った。