青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
「……なぁ、麗奈ちゃん」
自販機へと歩いていったふたりの姿が見えなくなった頃、トモがぼうっと前を向いて、言った。
「なに?」
トモにしては真面目な声色に、ちょっと戸惑う。
白い雲がゆっくりと動く青空を見上げて、トモは目を細めた。
「…俺、麗奈ちゃんのことが好きなんだけどさ」
……え?
思いがけない言葉に、目を見開く。
トモは今度こそまっすぐにあたしを見上げて、言った。
「……俺と、付き合ってくれませんか」
…トモの茶色がかった瞳に、空が映る。
雨に濡れた木々の葉から、雫が落ちた。
瑞々しくて、愛しいほど透明な『青』。
風が、あたしの髪を揺らす。
…忘れられない夏が、動き出していた。