青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


今知り合いと話したくない気分だったし、何より目の前の女の子に興味が湧いて、気づけば『ねえねえ』と声をかけていた。


『ここで何してんの?てか何組?名前は?』


立て続けに質問したからか、あからさまに嫌そうな顔をされる。

はぁ、という短いため息のあと、『…小城麗奈。三組』と言われた。

三組。俺は二組だから、隣のクラスだ。


『…小城さん…って…あっ』


名前を聞いて、やっと思い出した。

入学してすぐにカワイイと噂になった、あの滝本利乃といつも一緒にいる子だ。

利乃ちゃんがお姫様なら、小城さんはお姫様に付き添う騎士。

最初はみんな、系統の全く違うふたりが一緒にいるのを不思議がってたけど。

利乃ちゃんが楽しそうに話しているのを、小城さんが優しい目をして聞いている。

その構図が似合っていて、やがてみんな何も言わなくなった。

俺もやっぱり健全な男子高校生だから、『利乃ちゃん可愛いなぁ』くらいの気持ちで、ふたりを見てたけど。

実際、目に映っていたのは利乃ちゃんだけだったし。


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