青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


将来なりたいものとか、行きたい学校とか。


あたしはまだそれが、何も決まっていないんだ。


先生はいつものことだけど、ついに昨日、親にも『将来のこと、ちゃんと考えてるの』なんて言われてしまった。

いろんな人に、勉強さえしていれば将来の選択肢が増えると言われ続けて、とりあえず勉強はしてきたけど。


あたしは一体なにがしたくて、なにができるのか、わからない。


特技があるわけでも、特別な趣味があるわけでもない。

何にも興味が持てないというわけではないけど、それを職業にできるかって考えたら、何か違う気がして。


あたしは将来、何になるんだろう。

十年後、何をして生きているんだろう。


想像できなくて、見えない未来に少し怖くなって。

同級生がキラキラした瞳で夢を語るのを、羨ましい気持ちで眺めている。


「じゃあバイバイ、麗奈ちゃん」


駅の改札口を通って、あたしはこっちへ手を振る利乃の方を向いた。


「また明日ね」


そう言って、いつも通り利乃と別れる。

駅のホームは閑散としていて、さすが田舎町だなぁと思った。


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