青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。



…あたしも、夢が欲しい。


みんな、夢を見つけるきっかけは、人との関わりや『人の役に立ちたい』という思いから、らしいけど。

そんなことを思えるような特別な出来事も、起こらない。


……特別な人も、いない。


あたしの何かを変えてくれるような、そんな人が、あたしにはいないのだ。


そのことにもまた怖くなって、焦る。

あたしも、何かと出会いたい。

没頭できる趣味でも、なりたい職業でも、大切な誰かでも。


何かに対して一生懸命になって、生きてみたい。


ここのところ、毎日。

変わらない雨音を聞きながら、あたしはそんなことを考えていた。





「うちのクラスに、転校生来るって。麗奈ちゃん、聞いた?」


翌朝教室につくと、利乃がニコニコしながら、そう言ってきた。


…転校生?

なんでこんな、変な時期に。


「今日?」

「うんっ。男子らしいよー、カッコいい人だといいなぁ」


クラス中、この話題で持ちきりだ。

特に女子が、利乃みたいに瞳を輝かせて騒いでいる。

あたしは「ふーん」という言葉を返して、席についた。


「えーっ、なんか反応薄いっ」

「別に、カッコよかろうがそうじゃなかろうが、どうでもいいし」


…今後その男子と、何か関わりを持つことなんて、ないだろうし。


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