青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
…あたしも、夢が欲しい。
みんな、夢を見つけるきっかけは、人との関わりや『人の役に立ちたい』という思いから、らしいけど。
そんなことを思えるような特別な出来事も、起こらない。
……特別な人も、いない。
あたしの何かを変えてくれるような、そんな人が、あたしにはいないのだ。
そのことにもまた怖くなって、焦る。
あたしも、何かと出会いたい。
没頭できる趣味でも、なりたい職業でも、大切な誰かでも。
何かに対して一生懸命になって、生きてみたい。
ここのところ、毎日。
変わらない雨音を聞きながら、あたしはそんなことを考えていた。
*
「うちのクラスに、転校生来るって。麗奈ちゃん、聞いた?」
翌朝教室につくと、利乃がニコニコしながら、そう言ってきた。
…転校生?
なんでこんな、変な時期に。
「今日?」
「うんっ。男子らしいよー、カッコいい人だといいなぁ」
クラス中、この話題で持ちきりだ。
特に女子が、利乃みたいに瞳を輝かせて騒いでいる。
あたしは「ふーん」という言葉を返して、席についた。
「えーっ、なんか反応薄いっ」
「別に、カッコよかろうがそうじゃなかろうが、どうでもいいし」
…今後その男子と、何か関わりを持つことなんて、ないだろうし。