青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
期待なんて、するだけ無駄な気がする。
「おーい、席つけー」
しばらくして、担任が教室へ入ってきた。
それに合わせて、みんな席につく。
けど、転校生の存在を意識しているのか、どことなく浮ついた空気が漂っていた。
この二年四組の担任である武崎先生は、これから登場するであろう転校生への期待を隠しきれない女子達を見て、ニヤッと笑った。
「みんなももう知ってると思うが、今日からこのクラスに新しい仲間が加わる。…喜べ、イケメンだ」
最後の一言に、女子達が黄色い歓声を上げて喜び始めた。
対称的に、男子はうんざりという様子で女子を見ている。
斜め前の席で利乃がキラキラと瞳を輝かせるなか、あたしはやっぱり雨の降りしきる窓の外を眺めていた。
ーーガララ…
教室の扉が開く音がして、あたしは少しずつ窓からそっちへ視線を移す。
…見えたのは、綺麗で整った顔立ちをして、優しい雰囲気を漂わせる男の子。
彼の姿を目にした瞬間、雨音が耳の奥で、強く強く響いた。
あたしは、目を見開く。
みんなの視線を一身に浴びて、『彼』は姿を現した。