青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
『…池谷くんも、好きな人、いるの?』
『……さぁ、ね』
あのとき、彼は穏やかに笑っていたけど。
どこか寂しそうで、悲しげだった。
ずっと実っていない、彼の恋。
『大切な人』と心が重なり合わない、それはどれだけ怖いことなんだろう。
…あたしはきっと、怖いんだ。
トモの気持ちに応えたとして、あたしは彼とどこまで気持ちを重ねることができるだろう。
だって、あたしはあたしに自信がない。
もし重なり合わずに、すれ違ってしまったら。
やっと見つけた『大切な人』を、失ってしまうかもしれない。
……それが怖くて、あたしはもう一歩を踏み出せずにいるんだ。