青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。
「東京から来た、池谷 慎也くんだ。一年前はこっちに住んでたみたいだから、知り合いもいるかもな」
……女子達が、惚けたように前を見ている。
ふわりとした黒髪と、整った顔立ちと。
穏やかな表情を浮かべて、彼は口を開く。
あたしはその姿を、目を奪われたように見つめた。
「…池谷慎也です。沢西中学に通ってました。気軽に話しかけて下さい。よろしく」
…沢西って、利乃と同じ。
ちらりと利乃の方を見ると、口に手を当てて、目を見開いていた。
その様子は見惚れているというより、ただただ驚いているという感じで。
…利乃?
「会いたかったよ慎也ぁー!」
教室の端から聞こえたその大声に、ビクッと肩が揺れた。
見ると、クラスのムードメーカー的存在の松山智樹…通称トモが、心底感動という顔で池谷くんを見ている。
池谷くんはトモを見て、「久しぶり」と困ったように笑った。
「おっ、松山、知り合いだったのか」
担任がそう言うと、トモは「知り合いなんてモンじゃないっすから!」となんか熱く語り始めた。