青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。


「…別に、あたし何もしてないじゃん」

「んー、なんか考え方がね。優しいよ」

池谷くんは「優しくて、純粋」とも言った。

……なに、それ。


まるで、池谷くんはそうじゃないみたいな言い方だね。


「……意味わかんない」

「はは、わかんなくていいよ」

なにそれ!

さすがにカチンときて、ふいっと顔をそらす。

けど、横から笑い声が聞こえて、かぁ、と顔が熱くなった。

池谷くんが、歩き出す。

その後を追いながら、彼の悲しそうな笑みを思い出していた。



……『理屈じゃないんだよ。好きで、どうしようもない』


いいな。

池谷くんに、そんなにまで想ってもらえるひと。


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