神様なんて信じないっ!~イケメンと妖怪、召喚しちゃいました~
・鬼ごっこ
「どうして……」
避難訓練で外に出た生徒はみんな、あの羽根に洗脳されたはず。
どうして彼だけが、普通の顔色で目の前にいるの?
「……どうしてだと思う?」
槙原くんの唇が、彼らしくない形に歪む。
酷薄な笑顔に……。
「まさか……っ」
嫌な予感がして、後ずさる。
すると彼の茶色がかった瞳が、灰色に変わった。
真ん中にあるのは、細い、刃物の先みたいな瞳孔。
「……っ!!」
オロチだ!
あたしはとっさにそちらに背を向け、校庭へと走り出す。
だけど、あと一歩で外へ出られると思った瞬間……。
「なにこれ……っ!」
つま先が、何かに当たって気づいた。
外へ出られないようにか、透明の壁が行く手を阻む。
両手で思い切りたたいてみるけれど、びくともしない。
振り返れば、蛇の目をした槙原くん……いや、彼に憑依したオロチが、ゆっくりと近づいてきていた。
「こ、来ないでっ!」
あたしは慌てて、そこから逃げ出す。