神様なんて信じないっ!~イケメンと妖怪、召喚しちゃいました~
「あ、神崎さん」
教室に戻ると、もう幼なじみ兄弟はいなかった。
それぞれ部活があるから、そっちに行っちゃったのかな。
薄情者め。
その代わりにいたのは、うちのクラス委員長・槙原(まきはら)くんだった。
あの派手な兄弟とは違って、自然な黒髪に、黒ぶちメガネ。
優しげな顔があたしの方を見てるから、ドキっとした。
「どうしたの?泣いてたの?」
そう聞いてくれると、余計に泣きたくなる。
人の情けが心にしみる……。
槙原くんはクラスで孤立しているあたしに、何かと気を使ってくれる。
誰にでも優しいと言っちゃえばそれまでだけど、それでもいい。
あたしは彼に、ひそかに憧れているのだから……。
「うっ……」
「僕でよければ、話を聞くけど」
槙原くんは座っていた席を立ち、あたしに近寄る。
そして、あたしのすぐ前まできて、ハンカチを差し出してくれる。
ああ、なんて優しいんだろう……。
と思っていると、そのハンカチが突然顔に押し付けられた。
「ふぎゃっ」
あたしはびっくりして、その場から2歩分飛んで後退してしまった。
だって、だって……槙原くん、いきなりあたしの鼻水ふくんだもん!