花言葉を君に。~あふたーでぃず~
スイートピー
小鳥のさえずりが耳を撫でた。
窓に寄ると、小鳥が2羽、仲良く並んでいた。
ゆっくりと窓を開けると、小鳥はそろってどこかへ飛んでいってしまった。
視線で追い、空を仰ぐと、真っ青な雲ひとつない空があった。
6月の今日、あたしもあの小鳥みたいに旅立つ時間が来た。
両手を胸に当てる。
そこに輝くのはシルバーリングのネックレス。
軽く握り締める。
大丈夫、あたしはこれからも笑顔で生きていける。
風があたしの髪を撫でた。純白のドレスが揺れた。
コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
「はい。」
「失礼します。そろそろお時間ですので・・・あ。」
係りの人が、言葉を止めた。
「ごめん、準備いい?良かったらお義母さんが話あるって。」
タキシードに身を包んだ彼が顔をのぞかせた。
「美智さんが?」
「あぁ、少しだけって言ってたけど。お前その格好じゃ動けないよな。呼んでくるから。」
「ありがとう。」
係りの人も、一礼していなくなった。
また、静寂が戻ってくる。
鏡の前で、小さく笑った。
・・・もう、あの頃のあたしじゃないから。
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