花言葉を君に。~あふたーでぃず~


「ほら恵梨香、菫。紫苑ちゃん大変なんだから。」


「大丈夫ですよ、まだまだなんで。」


「とは言ったって、もうママなんだから、少しは気をつけないと。」


焦る遥さんとは対照的に、楓にぃにが笑った。


「遥は過保護なんだよ。なっ、紫苑?」


「私はただ、菫のとき帝王切開になったのが辛かったから、紫苑ちゃんには同じ思いしてほしくなくて・・・っ!」


「それが過保護なんだよ。大体自分だってお腹にいるだろ。」


一瞬、胸が痛んだ。


こうやって普通に会話してるだけなのに、夫婦って感じが漏れてて、伝わってきて。


苦しくなる。


割り切ってるはずなのに。


楓にぃには遥さんしか見てなくて、あたしなんてただの妹で。


わかってるのに、こんなに苦しくなるなんて、あたしは最低だ・・・。


「あ、そうだ。紫苑。」


楓にぃにが突然あたしを見た。


「な、なに?」


「・・・今度でいいけど、時間あるとき会って欲しい人がいるんだ。」


「いいけど・・・誰?」


楓にぃには一瞬戸惑った表情を見せたけど、すぐに小さく笑って「今度。」って言った。


「わかった。・・・?」


「紫苑、ちょっとこっち来いって。なんか話あるらしいから。」


そこで和泉くんに呼ばれて、あたしと楓にぃにたちは別れた。







━━━━あのときちゃんと楓にぃにに、誰なのかを聞いていたら。


あたしは、もう少し大人になれていたのかもしれない。

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