花言葉を君に。~あふたーでぃず~


柊さんは、咳き込んだ。


すかさず楓にぃにが駆け寄って、背中を優しくさする。


この人が、あたしのパパ・・・?


「いきなりでビックリしたでしょ?」


「あ、うん・・・」


「実はね、ずっと秘密にしてたけど。俺、母さんが死んで親戚に引き取られて、5年くらい経って・・・父さんが迎えに来たんだ。それからはずっと一緒に住んでる。」


5年・・・


それはちょうど、楓にぃにからの手紙が途切れた時期。


それからずっと一緒に住んでたなんて。


「紫苑にはパパは死んだことにしておく、ってなってたから。ずっと言い出せなくてごめんな。」


楓にぃには頭を下げた。


「や、やめてよ。謝んなくていいって。それより、ママが浮気したって?」


「それは。父さんから聞いたほうがいいよ。」


「・・・そうだな。僕の口から話すよ。」


柊さんは深呼吸をひとつして、あたしを見つめた。


その瞳は、どこか楓にぃにに似ている気がした。


「さくら・・・ママは君を身ごもってから、他の男を好きになった。それは僕が仕事ばかりで、ママを大切にしてあげられなかったからなんだ。」


「それで・・・?」


「浮気がバレて、ママの方から離婚を切り出してきた。僕はてっきりその男と再婚するんだと思ってたけど、違ったみたいだね。ママはひとりで君たちを育てた・・・病気で倒れるまで。」


柊さんはそうゆっくり話すと、微笑んだ。


「楓も紫苑ちゃんも、僕の大切な子どもだよ。」


その微笑みを見て、柊さんがパパだと確信した。


だって、楓にぃににそっくりだったから・・・。

< 17 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop