花言葉を君に。~あふたーでぃず~
小さくノックが聞こえて、美智さんたちが入ってきた。
「ごめんなさいね、紫苑ちゃん。忙しいのに。」
「ううん、全然。で、話って?」
「・・・特に大事なことじゃないの。ただ、まだ私の娘のままの紫苑ちゃんと話したかったのよ。」
美智さんは目尻を拭った。
「そんな。あたしはずっと二人の娘だよ?」
「俺もそう言ってるんだけどなぁ。美智、考えすぎじゃないのか?」
「分かってるのよ。紫苑ちゃんはどこへ行っても私とあなたの娘。でも、やっぱり寂しいのね。」
「美智さん・・・」
そこまで美智さんがはっきりと自分の思っていることを言うことはあまりない。
よほど寂しいのだろう。
ここまでいろいろあったけれど、大切に育ててきた娘が今日、旅立つのだから。
「大丈夫ですよ、お義母さん。お義父さん。」
そう口を開いたのは、あたしたちの話をそばで聞いていた彼だった。
「きっと紫苑は俺の奥さんになっても、一番に二人の娘だってことを考える気がします。・・・だろ?」
「うん、まぁそうかな。」
「だから、安心してください。変わるのは名前だけ。他は何も変わりませんよ。」
あぁ、この笑顔にあたしは惹かれたんだな。
そう改めて思うくらいの笑顔。
美智さんも「そうよね・・・」と呟いて、微笑んだ。
そう。
美智さんにも、尚紀さんにも、彼にも、明るい笑顔がよく似合う。