花言葉を君に。~あふたーでぃず~
時間は来てしまうものだ。
部屋を出て、静まり返った廊下を歩いていく。
あたしは不意に不安に襲われた。
・・・来てくれてるのかな。
声をかけてくれると思っていたのに。
来ない理由はない、なんて言っていたけれど、本当は来たくなかったとか。
考えれば考えるほど、分からなくなる。
「紫苑?」
「え?」
「大丈夫?顔色悪いけど。」
「あ、うん。平気。」
「無理すんなよ。辛いんだろ?俺にはよくわかんないけど。」
「大丈夫だって。ほら、みんな待ってるから急がなくちゃ。」
・・・本当はね、時々思うんだ。
これで正しかったのか、って。
答えなんかでないのは、分かってるよ。
それでも、あの頃の泣き虫のあたしが囁くの。
“本当の気持ちに正直になってる?”
“後悔しない?”
でも、自分の気持ちに正直には生きられない。
もしも、正直になってしまったら、きっとみんな困るもの。
だから、あたしはこの精一杯の嘘を、恋を、愛を、貫き通すの。
「紫苑。愛してるよ。」
彼が耳元で囁いた。
「あたしも、和泉くんのこと愛してるよ。」
その言葉に嘘はないから。